日本の医療崩壊は防げるか?

2023年8月2日 デルタクリニック勉強会資料

発表者:須藤 勉

1961年(昭和36年)、日本の医療は「国民皆保険制度」を導入し、世界に類のないすべての国民が平等に医療が受けられるようになった。
一方、時代の変遷とともに、医療費が高騰し継続困難となっている。最も大きな要因は出生率の低下と、医学の進歩に伴う高額医療費である (図1)。

図1

我が国に「国民皆保険制度」が制定されてから、約50年後の2010年、英国の経済紙「エコノミスト」が、近い将来日本の医療は崩壊し、今の子供たちに莫大な負債を背負わすであろうと警告した(図2)。

図2

実際、1995年には阪神淡路大震災、 2011年には東日本大震災に見舞われ深い傷跡を残し、地球温暖化と相まって我が国は災害列島と化している。
さらに、2019年を起点にパンデミックとなった新型コロナウイルス(SARS-Covー2)感染症(COVID-19)は、2020年以降、我が国でも多くの尊い命を奪った。
2023年 4年の歳月を経て、ようやく感染症2類から5類となり、厳しい制約が解かれたが、いまだに当院の「発熱外来」に SARS-Covー2の患者さんが途絶えることはない。

思い起こせば、4年前 SARS-Cov-2の遺伝子配列(Nature)を閲覧したとき、かつて我々が経験したことのないしたたかなウイルスであることを感じとった。
実際、 我々医療従事者は特効薬や万全な予防ワクチンがなく、防護服さえ入手困難な状況で、日々感染者が増加する環境に対峙しなければならなかった。

特筆すべきことは、ウイルス感染症の診断や治療に不可欠のPCR検査さえ、自由に行うことができず、
無計画な非常事態宣言が我々の生活制限のみならず、恐怖心を煽り医療従事者を苦しめた(図3)。

図3

歴史的に見ても予期せぬ災害は今後も必ず起こるであろう。
今回の SARS-Cov-2封じ込め対策は、我が国の医療崩壊阻止に寄与したであろうか?
 

まとめ

 新型コロナウイルス感染症(SARS-Cov-2)は、当初感染症 2類に分類され、国民には「非常事態宣言」を始めとする厳しい制限が強いられ、医療は緊迫した。 
2023年 5月、新型コロナウイルス感染症 ( SARS-Cov-2)は 感染症 5類となり、国民生活や医療体制が大幅に緩和されたが、依然として感染は継続し、医師法の応召義務となったが、差別や偏見はなくなっただろうか?

この機会に、全国民が一体となって「国民皆保険制度」 のあり方を真摯に考えなければならない。
助成金と称する莫大な金員は正しく使われたか?
専門家と称する科学者は国民の知識を向上させたか?
我が国のお家芸である「抗ウイルス剤やワクチン」の開発に力を注いだか?
反省すべき点はあまりにも多い。

(英国のThe Economistの図表は改変させて頂きました。本稿の作成に協力してくれた職員全員に感謝します。)